カラ期間の有無・・・結婚と離婚を複数回繰り返した人のカラ期間のチェックと験算はしんどい。
国民年金や厚生年金の加入期間が短い人が利用する方法で、合算対象期間(カラ期間)というのがあります。
代表的な例、よくある事例では、配偶者が厚生年金加入をしていた昭和36年4月~昭和61年3月までの間の、婚姻していた期間。
・・・これ以外にも、海外にいた期間(参考記事)や、外国籍の人で日本に昭和36年5月~昭和57年1月以前(この当時、すでに20歳以上になっている)から住んでいる人(証明書類:パスポートや外国人登録証)とかも、カラ期間が使えます。
(例)A子、昭和20年生まれで、昭和45年4月、B夫(当時、厚生年金加入)と結婚。妻、A子は被扶養者になる。
・・・ちなみに、健康保険の被扶養者の所得の制限(年間所得130万円未満)ができるのは、平成5年以降。
また、国民年金は、A子の場合、昭和61年4月まで、任意加入という時代←本当、この質問、非常に多い。
(主な質問の仕方)「国民年金の加入期間、何で昭和61年4月からなの?健康保険で扶養家族になってたのに・・・」
(答え)昭和36年4月~昭和61年の国民年金法改正までは、任意加入という時代だったから。・・・つまり、この期間=保険料を払っていない期間=給付も0円という期間。
一般的な事例なら・・・(例)からいえば、夫が厚生年金にずっと加入していた=結婚後、昭和61年3月まで、もし妻が国民年金に任意加入してなかったら、16年間を「カラ期間」と認められる。
(この内容を確認するのに必要な書類)
・戸籍謄本。
・・・婚姻していた期間を確認するため。
・夫の年金手帳や年金証書。
・・・夫が妻と結婚した後、昭和61年3月まで、どれだけ厚生年金に加入していたか見るため。
よく文句を言われたり、意気込んでやってきて、やっぱり年金受給できなかったという苦情になるのは・・・本人の記憶、思い込みだけで、結婚した時期を聞いて、年金相談の窓口で「受給可能」「不可能」と言ってしまって、よくよく戸籍謄本などの証明書類を見てみたら・・・ダメでした、というパターン。
(・・・なんで、こんなことになるのか?)
所詮は、本人の記憶なので、何年か年数が違っているということはあったりする。だから、証明書類を見ないと、適当なことは言えない・・・。
(例)でいえば、16年のカラ期間+9年の国民年金記録で受給できる・・・と思いきや、戸籍謄本で婚姻期間を見てみると、実際は昭和47年だった・・・とかいう場合。同棲していた期間を婚姻期間に加えて計算したりしてて・・・そういう記憶違いなんていうのは、よくあることである。
こういう「カラ期間」は、当然ですが、一般人でも確認することはできる。夫の「ねんきん特別便」の厚生年金の記録と、戸籍謄本を見てみることである。
(例えば、ねんきん特別便が、こんな感じなら・・・)
番号 加入制度 事業所名称等 取得年月日 喪失年月日 月数
1 厚生年金 株式会社** 昭和40年4月1日 昭和61年4月1日 252
2 厚生年金 株式会社## 昭和61年4月1日 平成17年4月1日 228
((例)からいえば・・・妻のカラ期間(この期間に任意加入や厚生年金加入があれば、その期間を除く)=昭和45年4月~昭和61年3月末まで=192月+国民年金3号被保険者期間228月←3号被保険者は「国民年金」とねんきん特別便などで表示される。決して3号被保険者は「厚生年金」の期間とはならない・・・これも、一般の人にちょくちょく質問をうけることがある)
この場合、年金計算される記録は・・・228月の国民年金加入。
・・・だから、60歳(厚生年金加入が1年以上の人)、65歳時の年金請求には、戸籍謄本が必ず必要となる。
逆に言うと・・・カラ期間を利用する人とは、自分の記録のみで受給できるかどうかが判断されないという、年金受給権が不安定な条件の人になる。
上記事例のように夫が厚生年金加入(サラリーマン)をしていたからいいのだが・・・途中から夫が自営業=国民年金加入になったりすると、このカラ期間の利用できる期間が縮小されます。
もっといえば、自営業の人と結婚した妻は・・・カラ期間など全く利用できません。だから・・・サラリーマンや公務員の夫と離婚して、自営業の人と再婚した時に、どれだけカラ期間が利用できるのか?というと・・・神のみぞ知る・・・という状況になります。←だから、その女性の結婚遍歴によっては、年金受給の天国と地獄が背中合わせな状況だったりするのです。
また、女性の場合、脱退手当金の記録もカラ期間として加算される。ただし、昭和36年4月以降の記録(←国民年金制度発足以降)にのみ、カラ期間として認められる。←これも、よく「長い期間、厚生年金に入って、脱退手当金をもらった記憶があるけど・・・」と質問される。
例えば、昭和32年~昭和38年にかけて厚生年金に加入して脱退手当金を受給したけど、ねんきん特別便に「脱退手当金支給期間」と出てくるのが昭和36年4月~昭和38年までというパターン。一般の方、国民年金の制度を熟知しましょう。
・・・では、そこそこ年金相談の窓口で見かけた具体的な相談事例を書いてみようと思う。
(事例1)
昭和15年生まれの女性。昭和45年、夫と婚姻。平成2年、夫死亡。そのため遺族厚生年金を請求。また、平成2年以降、平成5年頃まで国民年金(1号被保険者=自分で年金支払いする者)を加入して年金支払するが、その後、未納状態になる。
・・・当初、青い老齢年金請求書を持ってきていたので「すでに相談済みで、年金受給できるのだろう」と思って、戸籍謄本や前夫の厚生年金加入記録など、見返してみる。・・・しかし・・・
(計算)昭和45年~平成2年=20年(カラ期間+昭和61年4月以降、死亡時まで、妻は3号被保険者)
(本人の1号被保険者で国民年金納付の期間)平成2年~平成5年=3年
・・・惜しい。ずーと私は、夫の転職がないかとか、厚生年金被保険者照会記録の、戸籍謄本の妻と婚姻の時期から昭和61年3月末までの期間を、何度も験算し、チェックしてみて・・・やっぱり300月に至らない。この年代では短縮特例もない。
「どうして、こういう年金請求の用紙を持って来られたのですか?」「どこの窓口で、どう説明を受けました?」と、よくよく話を聞いてみると、「知り合いの社労士が受けられるかもしれないから行ってみなさい」と言ったという・・・ああ、また希望的観測に基づく適当なコメントをしている社労士か・・・。
ちょっと、社労士さんよ(って私もだけど(^^;)、希望的的観測でのコメントするなら・・・たとえば、「ねんきん特別便」の遺族厚生年金の記録、本人の年金加入記録、さらに、確実な証明書類の戸籍謄本を見てみて、カラ期間の計算、験算を何回かしてみてから、コメントしてみてよ・・・と思ってしまったわけで・・・。
この方の場合、昭和35年から数年間(・・・また戸籍の除籍簿なんかも必要)、公務員の方と結婚していて・・・というので、その期間をカラ期間でカウントできないかと言われる。
・・・これも、昭和36年4月以降、どれだけの期間、婚姻していたか分からないから、適当なことも言えない。←ここが、行政協力をしている場合、非常に注意するところになる。
客やそのお友達に喜んでもらう、顧客を集めたいために、希望的観測を言う「先生」という権威にあぐらをかいてコメントする社労士とは全く異なります。
・・・こんな場合・・・戸籍の除籍簿、前々夫の共済加入期間確認通知書(←前々夫が公務員なだけに)。しかも、前々夫は死亡している。取り寄せるのに、時間と手間がかかるような事例。
この時点になって、何を言っても仕方ないのですが・・・もっと早い段階で、自分の国民年金の情報を知っていたら、国民年金をもっとかけておくとか、免除を受けるとかいう方法もあったんですけどね・・・。
たいてい、こういう人が自分の年金受給できるだろう頃にやってきて、話を聞いて、「ええっ!老齢の年金もらえない」と初めて気付く場合も、そこそこあるので、年金制度に関心あるなら、年に何度か社会保険事務所に分らないことは質問しにいくのがいいでしょう。
(事例2)
2回以上、婚姻をしている場合の人のカラ期間。
一応、私は行政書士もやってて、こういう戸籍謄本や戸籍の除籍簿のことなんか、相続関係、権利義務関係に絡んだ書類を出す時に集めたりするので、ある程度、知識を持っています(他人に自慢できるほどの熟知した知識でもないですが・・・)。
最近は、遺族年金の請求のとき、また、こういうカラ期間の計算をするときに、取り寄せて見せてもらうわけですが・・・。
遺族年金の請求の時は、遺産分割も関係してて、めちゃくちゃたくさんの戸籍謄本を持ってくる人がいます・・・普通の人は、どのものが必要なのかよく分らないから。
(戸籍謄本の基礎的知識)
戸籍法の改正によって・・・明治5年、明治19年、明治31年、大正4年、昭和23年、平成6年という戸籍法、また戦後の家長制度廃止、関連する民法の改正、コンピュータ化にも関係があって、法改正と記述や掲載の方法が変わってきます。
(参考)わかりやすい戸籍の見方・読み方・とり方
かなりお役立ちな本だと思われます。記載例も載せてますから。
だいたい、カラ期間を確認する書類というと、昭和61年以前の記録が関与するから、コンピュータ化される前の戸籍謄本(除籍謄本)が主となる。
(事例2:例えば、こんな感じの字が羅列してあって・・・非常に読みにくい)
「昭和五拾弐年参月六日A田A夫と婚姻届出兵庫県神戸市生田区楠通壱丁目四番地B野B介戸籍より同日入籍」
「昭和六拾弐年四月壱日A田A夫と協議離婚届出兵庫県神戸市生田区楠通壱丁目四番地B野B介戸籍に入籍につき除籍」
(コンピュータ化されている場合・・・こんな感じ)
【離婚の裁判確定日(調停成立日,和解成立日,請求認諾日)】平成20年10月30日
【配偶者氏名】C山C太郎
【受理者】兵庫県神戸市中央区長
【従前戸籍】兵庫県神戸市中央区加納町一丁目4番地 C山C太郎
・・・非常に見やすい。こういうのは、離婚による年金分割の申請に来た時に、お目にかかる戸籍謄本。
さて、本題に戻って、カラ期間のカウントについて。
現在の夫の期間・・・上記のややこしい字の羅列の事例2の場合(婚姻期間は、昭和52年~昭和62年)、今の夫との期間は、夫が厚生年金の加入期間なら、3号被保険者になる。
この人の事例の場合、昭和24年生まれで、もうそろそろ年金受給が近い。しかし、厚生年金+国民年金で300月をクリアするのには、カラ期間を加算していかないと確実に無理な期間数(210月程度)だった。
途中、平成年間に、そこそこ長い未納の期間もあり、今の納付月数では不可能なのは目に見えている。
では、カラ期間のカウントをするのに・・・氏名検索(共通090)で戸籍謄本に載っている名前、生年月日で検索します。
さらに・・・この方の結婚した頃の話を聞いてみます。
『婚姻していた時期、「***」という会社に勤務していて、そこで知り合って結婚した』・・・ずばり、厚生年金の記録に出てきている。
この人か、と分かる。同姓同名の生年月日一致の人って、「田中幸子」「鈴木一郎」なんていう人には多いのは事実。
しかし、こうやって、カラ期間の対象になる人物(前夫)の厚生年金の記録確認をしていく。
・・・さすがに、こういうカラ期間(前夫の厚生年金加入期間による計算)の場合、社会保険庁に、除籍謄本や戸籍謄本を取ってこないといけないし、現在の夫の記録(ねんきん特別便などのお知らせ)を利用するだけでなく、現実的にWMの検索情報を利用して、前夫の情報を割り出して、「この人で合ってますか?」と問い合わせも行うという、複雑な作業が必要になります・・・だから、相談時間にめちゃめちゃ時間がかかってしまう。
でもって、その情報から厚生年金のカラ期間の験算をしてみる。
普通なら、基礎年金番号に統合されていて、前夫は「○○」という会社に勤務してましたか?なんて聞いたら、この人だな、と分かるわけですが・・・これが、また、そのカラ期間の計算の対象者が、すでに死亡している上に、親族も死亡していて、いない、さらには、平成9年以前に死亡(前妻の証言)・・・事例2は、まさにそういう状況でしたが・・・の場合、手帳番号で5つも記録があって、婚姻期間の頃に関係する記録も2つに割れていて・・・これをカラ期間としてカウントしていいのかどうか・・・なんていう難しい事例。一方は3年程度(このときの会社名は記憶にあった)、一方は5カ月程度で合計4年ほどのカラ期間。転職が多かった前夫だという・・・。記録内容が複雑すぎる。
こういう場合は・・・やはり照会票(前妻宛てに「カラ期間」についての調査結果を送る)を書いてもらって、記録が同じ人のものかどうか確認してもらうことになります。それまで、カラ期間が利用できない可能性があります。
また、これらを加算しても・・・250月くらい・・・つまり、まだ4年程度は国民年金を支払う=年金受給権が発生するのは63~64歳くらいになるだろうことを説明する。
・・・この人の場合、苗字が「甲田(もともとの名前)」「乙山(前夫の苗字)」「丙川(現在)」と3つあって・・・「甲田」の時の厚生年金の記録を加えるのにも、会社名が店舗名(店の名前)と合わなくって、「うーん」「どうなんだろう」「この期間、確かに働いていた記憶があるが・・・」と唸っていたから・・・約1時間30分程度、時間を使用してしまう(^^;。
何度も結婚を繰り返した人が前夫や前々夫の厚生年金加入期間に基づいた「カラ期間」を利用する相談っていうのは・・・本当、験算を何回もして確認するから・・・手間と時間がかかります。
では、また、時間ができれば、書いてみたいと思います。
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